トーキングスティックの材料はプログラムに書いてありますのでご覧ください
言葉の力、話す力をつけるというとたいていの場合、話し方や話す内容に焦点が当たることがほとんどです。
一方、私がトーキングスティックでお話会をするときに重視しているのが、聞く力や具体的な聞く設定です。
なぜならば、子どもたちは大勢の前で話す時、ハードルになるのが、うまく話をするということよりも、みんなに聞いてもらえるかということだからです。
これは安心で安全な場作りということにつながります。
途中でつっかえても、話の筋がなんだかおかしくなっても、友達や先生がみんな自分の話にしっかり耳を傾けてくれるという経験を積んでいくことがまず大切です。
立派で面白い話の時は認められるけれど、そうでなければ受け入れられないという経験をしてしまうと、話すということは大層なことで、中身がなければ相手にされないのだと認識が変わってしまいます。
そのため私のお話会では、はじめのうちは
「パス」って言えたらOKだよ。でスタートします。
「お話は作ってもいいし、作らなくてもいいよ。今回はトーキングスティックを受け取ったら次の人に回すよ。
パスって言えたらちゃんと回したってことだよ」
すると初めは1クラスで3人くらいしかお話を繋ぎませんが、素敵なのは子どもたちの表情。
自分の番になると、しばらくトーキングスティックをにぎってニコニコして嬉しそうに
「パス」
と言ってお隣にスティックを渡します。
みんな息を呑んでこの子は何か言うのかなとスティックを持っている子に注目します。スティックを握ってじっと考えている様子に
「早くしなよ」
という言葉をいう子もいません。
不思議な時間が流れ、お話し会1回目は10人に一人くらいの子が何かお話をつくって終わりになります。
そのお話も、アリさんが冒険に行くのではなく
「外に出ました」
「家に帰りました」
「また外に行きました」
というただ、ぐるぐるするだけのお話になったりもします。
立派なオチのある話でなくてよいのです。大したことを言わなくても、自分の番の時にみんなしっかり聞いてくれたという体験となります。
雨の日にこのお話し会をやることで、どんどんパスが減り、お話をする子が増えてきます。
これを繰り返していくことで、人の話を受け取って、それに付け加えてお話を広げていくことができるようになります。話す前に重要な聞く力が育ちます。もちろんクラス全体の安心感をつくることにもつながります。
「人の話を聞きましょう」
と声掛けするより、トーキングスティックの由来を知り、実際に使うことで「人の話を聞く」ということがどのようなことなのか、自分の話をしっかり聞いてもらうとどんな気持ちになるのかを深い部分で理解するのではないでしょうか。
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